用語解説
デマンドとは?電気の契約電力と基本料金の決まり方
電気の世界でよく出てくる「デマンド」という言葉。これは、30分ごとに計測される平均使用電力の最大値を指す用語で、おもにビルや工場・大型店舗などの高圧契約で使われます。
このデマンドが重要なのは、毎月の基本料金を左右する「契約電力」がデマンド値で決まるからです。値が一度上がると1年間下がらないため、事業所の電気代を大きく動かします。
この記事では、デマンド値の意味から、契約電力の決まり方、一般家庭との関係、値を下げるコツまでをやさしく解説します。専門用語は最小限にまとめました。
※本記事は電力会社(送配電事業者)の公表する契約区分・料金のしくみをもとにした一般的な解説です。実際の区分や単価は契約先・地域により異なります。情報は2026年9月時点。
目次
デマンドとは

まずは「デマンド」という言葉が何を指すのかを、関連する用語とあわせて整理しておきましょう。ここを押さえると、電気代のしくみがぐっと分かりやすくなります。
30分ごとの平均使用電力(30分デマンド値)
デマンド値とは、30分間に使った電力量から算出する「平均使用電力(kW)」のことです。電力メーターは毎時0分〜30分、30分〜60分という30分単位で電気の使用量を計測し、その平均値をkWに換算します。これが「30分デマンド値」です。
1日のなかでも、電気をたくさん使う時間帯は値が大きく、あまり使わない時間帯は小さくなります。その月のデマンド値のうちいちばん大きかった値を「最大需要電力」と呼びます。
つまりデマンドは「瞬間の使用量」ではなく、30分ならしたときの電力の大きさを表す指標です。短時間だけ機器を動かしても、30分の平均でならされるため、値の出方には特徴があります。用語の関係を表にまとめました。
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| 用語 | 意味 |
|---|---|
| デマンド値 | 30分ごとに計測する平均使用電力(kW) |
| 最大需要電力 | その月のデマンド値のうち最も大きい値 |
| 契約電力 | 過去1年間の最大需要電力(高圧小口の場合) |
| 基本料金 | 契約電力 × 基本料金単価 で毎月かかる |
検針票やWeb明細に「最大需要電力」「契約電力」といった項目があれば、それがデマンドに関わる数値です。ふだんは意識しにくい指標ですが、基本料金の土台になっている大切な数字です。
契約電力(基本料金)はデマンドで決まる

デマンドがなぜ電気代に効いてくるのか。その理由は、基本料金のもとになる「契約電力」の決め方にあります。ここが家庭の電気とは大きく違う点です。
実量制|過去1年間の最大デマンド値で決まる
高圧で電気を受ける契約のうち、契約電力が500kW未満の「高圧小口」では、契約電力が実量制で決まります。実量制とは、当月を含む過去1年間(12ヶ月)の最大デマンド値を、そのまま契約電力とするしくみです。
一方、契約電力が500kW以上の「高圧大口」では、需要家と電力会社が使用設備の内容などをもとに決める「協議制」が採られます。どちらの区分かで、契約電力の決まり方が変わります。
基本料金は「契約電力 × 基本料金単価」で計算されるため、契約電力が大きいほど基本料金も高くなります。デマンド値を抑えて契約電力を下げることが、基本料金の節約に直結するわけです。決まり方の違いを整理しておきましょう。
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| 契約区分 | 契約電力の決め方 | 対象の例 |
|---|---|---|
| 高圧小口(500kW未満) | 実量制(過去1年の最大デマンド値) | 中小のビル・店舗・工場 |
| 高圧大口(500kW以上) | 協議制(使用設備の内容などで協議) | 大規模施設・大型工場 |
実量制は、申請ではなく実際の使用実績で自動的に契約電力が決まるのが特徴です。設備を増やさなくても、使い方しだいで契約電力が上がることがある点に注意が必要です。
一度上がると1年間下がらない
実量制でとくに気をつけたいのが、「一度大きなデマンド値が出ると、その値が1年間は契約電力として適用される」という点です。たった30分のピークでも、その後12ヶ月にわたって基本料金に影響し続けます。
たとえば、ある月に一時的に多くの機器を同時に動かして高いデマンド値が出ると、その月以降は使用を控えめにしても、ピークが出た月から1年が過ぎるまで契約電力は下がりません。基本料金も高いまま据え置かれます。
実量制の注意点
- 契約電力は過去1年間の最大デマンド値で決まる
- 30分のピーク1回で契約電力が上がることがある
- 上がった契約電力は1年間は下がらない
- 基本料金は契約電力に比例して高くなる
だからこそ、高圧契約の事業所では年間を通じてピークを作らない運用が大切になります。ピークが出やすいのは、冷暖房の負荷が高まる真夏や真冬の日中です。この時間帯の使い方が、1年分の基本料金を左右します。
家庭(低圧)とデマンドの関係

ここまでは高圧契約の話でした。では、一般家庭の電気代にデマンドは関係するのでしょうか。結論から言うと、多くの家庭では直接は関係しません。
一般家庭はアンペア制・最低料金制が中心
一般家庭が結ぶ「従量電灯」の契約では、基本料金の決まり方がデマンドとは異なります。関東などでは契約アンペアで基本料金が決まる「アンペア制」、関西・中国・四国・沖縄では一定額の「最低料金制」が採られています。いずれも30分デマンド値で基本料金が変わるしくみではありません。
つまり、ふつうに暮らす家庭では「デマンド値が上がって基本料金が跳ね上がる」ことは基本的にないということです。デマンドを気にする必要があるのは、高圧で受電するビルや工場、大型店舗などが中心です。契約の種類ごとの違いを表で見てみましょう。
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| 契約の種類 | 基本料金の決まり方 | 主な対象 |
|---|---|---|
| 従量電灯(アンペア制) | 契約アンペアで決まる | 関東などの一般家庭 |
| 従量電灯(最低料金制) | 一定額(最低料金) | 関西・中国・四国・沖縄の家庭 |
| 低圧電力(動力) | 契約容量(kW)で決まる | 小規模店舗の業務用機器 |
| 高圧(実量制) | デマンド値で決まる | ビル・工場・大型店舗 |
契約アンペアの選び方は電気のアンペアとは、従量電灯のしくみは従量電灯とはでくわしく解説しています。ご自宅の基本料金がどう決まっているかは、まず契約の種類を確認するところから始めましょう。電気代の内訳は電気代の計算方法もあわせてご覧ください。
デマンド値を下げるコツ

高圧契約の事業所でデマンド値を下げるには、ピークの30分をいかに作らないかがカギになります。代表的な考え方を紹介します。
ピークカットとピークシフト
デマンド対策の基本は、「ピークカット」と「ピークシフト」の2つです。ピークカットは、電力使用が集中する時間帯に一部の機器を止めるなどして使用量そのものを抑える方法。ピークシフトは、動かす時間をずらしてピークの山を平らにならす方法です。
とくに効果が大きいのは、複数の大型機器を同時に動かさない工夫です。空調・生産設備・給湯などが重なる時間帯をずらすだけでも、最大需要電力は下がります。デマンド値を常時監視し、設定値に近づくと警報を出す「デマンド監視装置」を導入する事業所も多くあります。
デマンド値を下げる主な方法
- ピークカット:混雑時間帯の使用を抑える
- ピークシフト:稼働の時間帯をずらす
- 同時使用を避ける:大型機器を重ねて動かさない
- デマンド監視装置で値を常時チェックする
なお、こうしたデマンド対策は高圧契約向けの話です。一般家庭の場合は、基本料金より使った量に応じてかかる電力量料金や、契約プランの見直しのほうが節約効果につながりやすいといえます。今の電気代が適正かどうかは、シミュレーションで手軽に確認できます。
よくある質問
Q. 家庭の電気代にもデマンドは関係しますか?
A. 一般的な家庭の「従量電灯」契約では、基本料金は契約アンペアや最低料金で決まり、30分デマンド値では変わりません。そのため、多くの家庭ではデマンドを直接気にする必要はありません。デマンド値で基本料金が決まるのは、ビルや工場・大型店舗などの高圧契約が中心です。ただし、店舗を営んでいる方や事業所の電気を管理している方は、契約区分によってデマンドが基本料金を左右することがあります。ご自身の契約が従量電灯か、高圧かをまず確認してみてください。
Q. デマンド値はどこで確認できますか?
A. 高圧契約の場合、電力会社(小売・送配電)のWeb会員サービスや検針票で、月ごとの最大需要電力を確認できます。多くの事業所ではスマートメーターにより30分ごとの使用実績が記録されており、Web上でグラフとして見られることもあります。いつ、どの時間帯にピークが出ているかが分かれば、対策の的が絞れます。詳しい確認方法は契約先の電力会社によって異なるため、明細の記載や会員ページの案内を確認するか、電力会社の窓口に問い合わせるのが確実です。
Q. 契約電力を下げるとどのくらい安くなりますか?
A. 基本料金は「契約電力 × 基本料金単価」で決まるため、契約電力(=最大デマンド値)を下げた分だけ基本料金も下がります。たとえば基本料金単価が1kWあたり月1,300円前後の契約で、ピーク対策により契約電力を10kW下げられれば、単純計算で月1万円以上、年間では十数万円の基本料金の差になり得ます。実際の単価や効果は契約先・地域・使用状況で異なりますが、ピークの30分を抑える取り組みは、1年を通じた基本料金の削減につながります。
まとめ|デマンドは高圧契約の基本料金を左右する
デマンド値とは、30分ごとに計測される平均使用電力(kW)のことです。高圧小口(500kW未満)では、過去1年間の最大デマンド値がそのまま契約電力となり、基本料金は「契約電力 × 単価」で決まります。一度上がった契約電力は1年間下がらないため、ピークを作らない運用が大切です。
一方、一般家庭の従量電灯はアンペア制や最低料金制で、デマンドで基本料金が変わることは基本的にありません。家庭で電気代を見直すなら、電力量料金やプランの比較が近道です。まずはシミュレーションで今の料金を確認してみましょう。
この記事のポイント
- デマンド値=30分ごとの平均使用電力(kW)
- 高圧小口の契約電力は過去1年の最大デマンド値で決まる(実量制)
- 基本料金は契約電力 × 基本料金単価
- ピークは一度出ると1年間据え置きになる
- 一般家庭(従量電灯)はデマンドで基本料金は変わらない
※本記事の契約区分・料金のしくみは一般的な解説です。実際の契約電力の決定方法や基本料金単価は、契約先の電力会社・地域・契約種別により異なります。正確な内容は契約先の電力会社にご確認ください。情報は2026年9月時点。
この記事を監修した人
電気設備エンジニア
(第二種電気工事士)
住宅・商業施設の電気設備工事に15年以上従事し、年間200件以上の現場を経験。第二種電気工事士・第三種電気主任技術者の資格を持ち、スマートメーターの設置から漏電修理まで幅広い実務経験があります。当サイトではトラブル解決・電気料金の仕組み・用語解説の記事を担当。プロフィール詳細はこちら
電気工事士
中村 拓也
デマンドは「その月のいちばん電気を使った30分」で決まると考えると分かりやすいです。現場で見ていると、ピークが出るのは空調と生産設備、給湯などが重なった時間帯がほとんどです。やっかいなのは、この1回のピークが契約電力として1年間ついて回ること。基本料金は契約電力に比例するので、一度上げてしまうと、以降12ヶ月ずっと高い基本料金を払い続けることになります。逆に言えば、ピークの30分さえ抑えられれば基本料金は下げられます。まずはデマンド監視装置や電力会社のWebサービスで、いつ・どの機器で値が跳ね上がっているかを把握することが第一歩です。