電気料金の基礎知識
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燃料費調整額はどう計算される?電力会社の内部の算定方法を解説
電気料金の明細で毎月変わる「燃料費調整額」。金額が上下するので不透明に感じるかもしれませんが、実際には電力会社が勝手に決めているわけではなく、決められた計算式にもとづいて算定されています。
結論からいえば、燃料費調整額は「平均燃料価格」と「基準燃料価格」の差に、会社ごとの単価を掛けて求めます。原油・LNG・石炭の輸入価格が式の出発点です。
この記事では、電力アナリスト監修のもと、電力小売事業者が内部で使っている燃料費調整額の計算方法を、式と手順に分けて2026年7月時点の情報で解説します。「燃料費調整額とは何か」という基礎は、燃料費調整額とは?の記事もあわせてご覧ください。
目次
燃料費調整額の全体像|「単価×使用量」で決まる

まず全体像です。毎月の請求に乗る燃料費調整額そのものは、とてもシンプルな掛け算で決まります。ポイントは、変動するのが「単価」のほうだという点です。
=
燃料費調整単価毎月変わる
×
使用電力量その月のkWh
※単価がプラスなら加算、マイナスなら差し引かれる
したがって、電力会社の「計算方法」の中心は、この燃料費調整単価をどう出すかにあります。単価が決まれば、あとは自分の使った電力量を掛けるだけです。
- 燃料費調整単価:燃料の輸入価格の変動を反映して毎月決まる(全社共通の考え方)
- 使用電力量:検針で確定するその月のkWh
燃調費の計算式【3ステップ】

電力会社が単価を出す流れは、大きく3つのステップに分けられます。順番に見ていきましょう。
- 1
平均燃料価格を算出する直近3か月の貿易統計をもとに、原油・LNG・石炭の輸入価格を「原油換算」でまとめ、加重平均した価格を出します。これがその期間の燃料コストの指標になります。
- 2
基準燃料価格と比べる料金プランを設定したときに想定した「基準燃料価格」と、ステップ1の平均燃料価格を比較します。基準より高ければプラス調整、低ければマイナス調整の方向になります。
- 3
差額に基準単価を掛けて単価を出す価格差に、会社ごとに決められた「基準単価」を掛け、1,000で割って燃料費調整単価を求めます。これに使用量を掛けたものが、その月の燃料費調整額です。
=
(
平均燃料価格直近3か月
−
基準燃料価格設定時の想定
)
×
基準単価会社ごと
÷
1,000
※平均燃料価格が基準を下回る月は、符号が逆になりマイナス単価(値引き)になる
つまり単価は、「基準からどれだけ燃料価格が動いたか」に会社ごとの感度(基準単価)を掛けたものだといえます。使用量が同じでも、月によって金額が変わるのはこのためです。
- 基準単価は「平均燃料価格が1,000円動くと単価をいくら動かすか」を表す会社ごとの係数
- 平均燃料価格が基準を下回れば単価はマイナス(値引き)になる
平均燃料価格の中身|原油・LNG・石炭の加重平均

計算のカギを握るのがステップ1の平均燃料価格です。ここは、火力発電に使う3つの燃料の輸入価格を組み合わせて求めます。
+
LNG価格×係数β
+
石炭価格×係数γ
※原油換算1klあたり。α・β・γは燃料構成を反映した会社ごとの係数(ウエイト)
α・β・γは、その電力会社の発電に使う燃料の構成比を反映した係数です。LNG火力の比率が高い会社ほどβ(LNGの係数)が大きくなる、といった具合に会社ごとに異なります。参考として、東京電力エナジーパートナーの係数の一例は次のとおりです。
| 燃料 | 換算係数(東京電力エナジーパートナーの一例) |
|---|---|
| 原油 | α = 0.1970 |
| LNG(液化天然ガス) | β = 0.4435 |
| 石炭 | γ = 0.2512 |
※係数は会社・プラン・改定時期により異なり、見直されることがあります。上記は仕組みを示すための一例です(2026年7月時点)。最新の値は各社の公表資料でご確認ください。
なぜ請求に2〜3か月遅れて反映されるのか
「燃料が高騰したのに、請求はしばらく普通だった」という経験はありませんか。これは、制度上あえてタイムラグを設けて算定しているためです。
平均燃料価格は「直近3か月分」の貿易統計を使い、その結果が数か月あとの請求に反映されます。たとえば、次のような流れです。
- 1月〜3月の燃料価格の平均を算定
- その平均燃料価格が、6月分の電気料金の単価に反映される
- 以降も、3か月の平均を1か月ずつずらしながら毎月更新していく
3か月平均を使うのは、原油やLNGの価格は日々大きく動くため、単月の急騰・急落をならして、請求額の乱高下を抑えるねらいがあるからです。そのぶん、足元の市況が請求に映るまでには時間差が生まれます。
上限と「自由料金」「独自燃調」の違い

同じ「燃料費調整」でも、契約しているプランの種類によって扱いが変わります。とくに上限の有無は、家計への影響が大きいポイントです。
大手電力の規制料金(従量電灯など)には、基準燃料価格の1.5倍という上限が設けられており、燃料が高騰しても単価がそれ以上は上がらない仕組みです。一方、新電力や大手の自由料金プランでは、この上限が撤廃されているケースが多く、高騰局面ではそのまま請求に反映されることがあります。
計算方法をチェックするときの注意点
- 規制料金は基準燃料価格の1.5倍が上限。高圧・特別高圧はもともと上限の設定がない
- 自由料金は上限なしのプランが多く、燃料高騰時の負担が大きくなりやすい
- 新電力には、貿易統計ではなく卸電力市場(JEPX)の価格に連動する「独自の調整項目」を使う会社もある
この「独自の調整項目」は、燃料費調整額とは別物です。市場価格に連動するため算定の考え方が異なり、単純な比較ができません。詳しくは電源調達調整費とは?の記事で解説しています。
まとめ|燃調費は「決まった式」で算定される
燃料費調整額は、電力会社が任意に決めているのではなく、平均燃料価格と基準燃料価格の差に会社ごとの基準単価を掛けるという、決まった式で算定されています。式の出発点は原油・LNG・石炭の輸入価格です。
仕組みを知っておくと、明細の変動に振り回されず、上限の有無や独自燃調の有無まで含めてプランを冷静に見比べられます。計算の考え方を、契約前のチェックに役立ててみてください。
この記事のポイント
- 燃料費調整額 = 燃料費調整単価 × 使用電力量。変動するのは単価のほう
- 燃料費調整単価 =(平均燃料価格 − 基準燃料価格)× 基準単価 ÷ 1,000
- 平均燃料価格は、原油・LNG・石炭のCIF価格を会社ごとの係数(α・β・γ)で加重平均したもの
- 直近3か月平均を使い、2〜3か月遅れて請求に反映される(乱高下を抑えるため)
- 規制料金は基準の1.5倍が上限。自由料金は上限なしが多く、独自燃調(市場連動)は別の仕組み
燃料費調整額の計算に関するよくある質問
燃料費調整額の計算方法について、読者からよく寄せられる質問にまとめて回答します。
Q. 燃料費調整単価は自分でも計算できますか?
A. 計算式は公開されているため、必要な数値がそろえば概算は可能です。燃料費調整単価は「(平均燃料価格 − 基準燃料価格)× 基準単価 ÷ 1,000」で求められます。ただし、平均燃料価格の算定に使う貿易統計の値や、会社ごとの換算係数(α・β・γ)・基準燃料価格・基準単価が必要で、これらは各社の公表資料を参照する必要があります。実務上は、毎月各社が公表する「燃料費調整単価」をそのまま確認するのが確実です。自分の使用量(kWh)に単価を掛ければ、その月の燃料費調整額の目安がわかります。
Q. なぜ会社によって燃料費調整単価が違うのですか?
A. 発電に使う燃料の構成や、基準となる価格・単価の設定が会社ごとに異なるためです。平均燃料価格を出す際の換算係数(α・β・γ)は、その会社の燃料構成を反映しているため、LNG中心の会社と石炭中心の会社では同じ市況でも数字が変わります。さらに、比較の起点となる基準燃料価格や、差額に掛ける基準単価もプランごとに設定されています。加えて、自由料金では上限の有無も異なるため、同じ月でも会社・プランによって燃料費調整額に差が生じます。
Q. 燃料費調整額がマイナスになることはありますか?
A. あります。平均燃料価格が基準燃料価格を下回った月は、単価がマイナスになり電気料金から差し引かれます。燃料費調整はプラス方向だけの制度ではなく、燃料価格が基準より安いときには値引きとして働きます。実際に、燃料価格が落ち着いた局面では多くの会社でマイナス単価になることがあります。明細では「燃料費調整額 ▲◯◯円」のように表示されるため、請求書で符号を確認してみてください。金額は使用量が多いほど、プラス・マイナスどちらの影響も大きくなります。
※本記事の計算式・数値は2026年7月時点の公開情報(資源エネルギー庁および各社公表資料)にもとづく参考情報です。換算係数・基準価格・基準単価・上限の扱いは会社やプラン、改定時期により異なります。最新かつ正確な値は、契約先の公式資料でご確認ください。
この記事を監修した人
電力アナリスト
佐藤 健一大手エネルギー調査会社で10年間、700社以上の電力会社の料金データを分析。エネルギー管理士の資格を持ち、燃料費調整額や電源調達調整費を含めた「実質請求額」ベースの料金比較を専門としています。当サイトでは電力会社の料金比較・ランキング・口コミ記事のデータ分析を担当。プロフィール詳細はこちら
電力アナリスト
佐藤 健一
燃料費調整額は「よくわからない変動費」と思われがちですが、式そのものは公開されていて、決して恣意的なものではありません。プランを比較するときは、電力量単価の安さだけでなく、燃料費調整に上限があるか、そして貿易統計ベースの一般的な燃調か、市場連動の独自燃調かまで見ておくと、高騰局面での差が読めるようになります。仕組みを味方につけて、納得して選んでください。